山桜樹皮の未利用材活用 質感豊かな内装パネルに

山桜樹皮の未利用材活用 質感豊かな内装パネルに


●パリの見本市で注目

 仙北市角館に本店を構える樺細工製造販売・冨岡商店が昨年商品化。日本ウッドデザイン協会の「ウッドデザイン賞 2024」で入賞。今年1月にはパリで開催された欧州最大級のインテリアデザイン見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展し国内外のインテリア業界から注目されている。

 オリジナリティーあふれる内装パネルは、樺細工の新たな魅力発信を目指す冨岡浩樹社長と、仏在住デザイナー、マウリシオ・クラベロ・コズロフスキーさんとの交流で生まれた。

 

●仏のデザイナー提案

 曲げわっぱとの組み合わせなど、江戸時代から続く樺細工のデザインに新風を吹き込み、仏高級ブランドのクリスチャン・ディオールとオフィシャルサプライヤー契約を結ぶなど積極的に海外展開を進める冨岡社長。仏出張で出会い10年来交流しているコズロフスキーさんから一昨年に樺細工の内装材への取り入れを提案され、「これだ」と膝を打った。

 茶筒など一般的な樺細工には皮目が美しく厚過ぎず、磨くとつやが出る樹皮が好まれ、条件に合わない樹皮は大量に倉庫にストックされていた。この未利用材の使い道を模索していたさなかに受けたアイデアだった。

 

●重労働に報いたい

 「樹皮の採取は木に登って行う重労働。作業員の仕事に報いるためにも、無駄なく採取した樹皮を使い切る方策が必要だった」と冨岡さん。

 さらに、背中を押したのが「サキホコレ」のパッケージデザインでも知られるグラフィックデザイナー・原研哉さんの著書だった。「自然の美しさが引き立つのは人工物である建築との対置である」旨の一文に、より野趣に富んだ未利用材のパネルへの利用を決めた。

 デザインはもちろんコズロフスキーさんが担当。一昨年角館に来訪し武家屋敷や樺細工伝承館などを巡り「武家」や「武具」に触発されたという8パターンがカタログで紹介されている。

 大きさ自在の受注生産。価格は基本型(横90㌢、縦180㌢)で7080万円台という。都内の欧州ブランド店や宿泊施設の装飾に使用されるほか、内装デザイン会社などから問い合わせが相次いでいる。

 

●伝統に新風吹き込む

 江戸の昔から続く樺細工。大正末期に民芸運動を主唱し角館の職人も指導した柳宗悦(やなぎむねよし)は「樺細工の道」で、樺細工は「優れた材料に立つ工芸品」と位置付け、「小型のものを中心に製産されるのが常道」と著した。「無機質の建造物に大自然の美しさを吹き込む」令和生まれの内装パネルに注入された「貴重な素材を無駄にしないSDGsの心」は、時空を超えて「民芸運動の父」の垂訓にも新たな風を吹き込んでいるのかもしれない。

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