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あきた経済インタビュー

2024年6月13日読売新聞に掲載されました。


樺細工 海外のデザイナーとコラボで海外展開

あきた経済インタビュー

 秋田を代表する伝統的工芸品・樺細工を製造販売する仙北市の「冨岡商店」は、樺細工の魅力を広く発信しようと、海外のデザイナーとの商品開発や国際見本市への出展などを積極的に行っている。社長の冨岡浩樹さんに海外展開の経緯や経営の展望を聞いた。(聞き手 浅水智紀)

●海外展開の契機は。
 2008年のリーマン・ショックと11年の東日本大震災だった。テーブルや照明器具などの高額商品がリーマン・ショックでまったく売れなくなり、大震災では三陸地方に納入した商品が被害に遭い、その後も売り上げが鈍った。そこで12年、ドイツの国際見本市にモダンなデザインを取り入れた約30種類の商品を中心に初出展したところ、フランスの有名ブランドとの商談がまとまった。樺細工のような美しい桜の皮を使った商品は海外にはなく、世界で唯一無二のものだ。桜は日本のイメージとも重なる。

●海外デザイナーとのコラボが多い理由は。
 海外展開に必要なキーワードは「ローカライズ」だと思う。フランスで売りたいなら、現地に住むクリエイターと知り合い、どんな商品なら普及するか考え続ける必要がある。最新作として先月発表した樺細工のインテリアパネルも、こうした試みの延長だ。南米出身でフランス在住のデザイナーと組んだ商品で、伝統工芸の素材をモダンにデザインした室内装飾として、ホテルや公共施設など様々な場面でも使ってもらえる商品に仕上がった。桜の皮はサスティナブルな素材であり、海外での受けもいい。

●今後の経営課題は。
 悩みは原材料となるヤマザクラの皮の調達。樺細工は江戸時代の「武士の内職」だったが、芸術品の域に昇華してしまった。芸術品として使える素材は、赤紫色で、つやが良い、強靭さも兼ね備えた部分に限られる。採取した皮のすべて使えるわけではないので、それが新商品の開発を難しくしていた。
 一方、桜の皮が取れるヤマザクラは広葉樹林の中に生えているので、山に分け入っての採取は重労働だ。なぜか、やせた土で日当たりもあまり良くないような厳しい環境の方が、樺細工に適した木に育つ。しかも、採取時期は幹から皮が浮き上がっている梅雨明けから9月上旬の短い期間に限られる。
 毎年、自ら山に分け入っているが、採取場所まで往復2時間かかる場合もある。採取してくれる人々の収入を確保するには、茶筒には適さない桜の皮でも生かせるような新たな商品開発が必要になってくる。樺細工のインテリアパネルは、こうした意味でも期待される商品だ。
 世界に一つ、秋田県独自の伝統工芸である樺細工を「使い続ける豊かさ」こそが、人々に潤いのある生活に貢献することだと信じている。それが我が社が掲げた経営理念。今後も、時空を超えた価値を樺細工に込めて発信していきたい。

とみおか・こうき
大仙市出身。角館高校、都内の大学を卒業し、1985年に冨岡商店入社、2005年に社長就任。角館工芸協同組合専務理事、仙北市商工会理事などを務めている。高校時代に始めた合気道は6段で、日本合気道協会で理事も務める。


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