REPORT メゾン・エ・オブジェ2025
伝統素材、職人の技を武器に欧州に適応したデザインを披露
冨岡商店
伝統工芸と欧州デザイナーが融合、樺細工をウオールパネルに
山桜の樹皮を使った、日本ならではの樺(かば)細工。ひと昔なら文箱、現在なら茶筒で知られる昔ながらの技術を使い、欧州向けにデザインを施して成功しているのが冨岡商店(秋田県仙北市)だ。
今回、欧州で本格的に発表したのが「センシィヴ・ウオール・カヴァーリング・パネル」。フランスに拠点を置くデザイナー、マウリシオ・クラベロ・コズロフスキー氏がデザインした。素材を様々な形にカットし、広い平面に並べるシンプルなアイデアだが、日本人にとっては驚く発想だ。山桜の樹皮の野性味と繊細さを生かしつつ壁を美しく飾るモダンなインテリアマテリアルは、2024年の「ウッドデザイン賞」で入賞した。
冨岡商店は12~19年に独フランクフルトの見本市「アンビエンテ」に樺細工のトレーや茶筒などで出展。20年からはほぼ定期的に「メゾン・エ・オブジェ」に出展しており、フランスや英国の世界的に有名な企業とも取引がある。
日本では百貨店や専門店で取り扱いがあるが、海外向けのプロダクトのデザインにはコズロフスキー氏をはじめ、欧米のマーケットや好みを良く知るデザイナーを起用している。例えばドイツの「iF DESIGN AWARD」で金賞を受賞している伊東祥次氏などがいる。
「海外に出るときは、その地を知る人によってローカライズすることが大切」と冨岡商店代表取締役の冨岡浩樹氏は言う。今回の出展でも、様々なインテリアデザイナー、エンドユーザーとコンタクトがあったそうだ。
現在、原料の山桜樹皮は、サステナブルな計画の下で管理されている山林の木を使用。切った木は無駄が出ないように、すべて何らかの材料として使う。このセンシティブ・ウォール・カヴァーリング・パネルでも、主要プロダクトの茶筒には使えない樹皮部分を使っている。
(永末アコ=ジャーナリスト)